換気口の防音対策!24時間換気システムが騒音の侵入口になっているかも!
近年の新築業界では、高気密・高断熱が重要なキーワードとなっています。日本の住宅というのも、高温多湿な気候でも家が長持ちすることを考えられてきたという歴史があり、もともとは通気性の高い家づくりが進められてきました。実際に、古い日本家屋の中には、ふすまや障子で各部屋を区切る構造になっていて、壁が存在しない家も現存しています。
これが、家の中の温度や湿度をエアコンで調整できるようになった現在では、通気性よりも気密性の高さや断熱性の高さを求められるようになっているのです。これは、高気密・高断熱住宅になると、家の外と中の空間を完全に分断することが可能で、室内の温度が外気温の影響を受けにくくなります。そのため、高気密・高断熱住宅は、室内温度を一定に保ちやすくなり、エアコンなどにかかる光熱費を削減できるなど、省エネな生活が実現するので、地球環境保全にも一役買えるといった点がメリットとして紹介されることが多いです。ちなみに、高気密は、家に隙間が少ないことを指しており、高断熱は家の各所にふんだんに断熱材が施工され、高い断熱性が実現しているという意味です。つまり、最新の高気密・高断熱住宅というものは、そのままの状態で非常に高い防音性を持っていると考えられ、実際に通常の住宅よりも音の問題は生じにくいと考えて間違いありません。
ただ、本来は非常に高い防音性を持つ高気密・高断熱住宅ですが、24時間換気システムを実装することで、防音上の弱点ができてしまうという点には注意が必要です。この記事では、高気密・高断熱住宅に存在する、防音上の弱点と、その対策をご紹介します。
24時間換気システムとは
それでは、住宅の高気密化が進んだことにより、取り入れられるようになった24時間換気システムについて簡単に触れておきます。24時間換気システムは、その名称からイメージできるように「室内の空気を一日中換気して、常に空気の入れ替えが行われる仕組み」のことを指しています。上述しているように、元来の日本の住宅は、高温多湿な気候に対応するため、非常に高い通気性を持っていたのですが、エアコンの普及とともに、住宅の高気密化が進んできました。そして、住宅の高気密化は、空調効率を高めてくれる、隙間風などがなくなり、過ごしやすい住空間が作れるなど、非常に多くのメリットをもたらせてくれます。しかしその一方で、気密性の高さから換気不足に陥ると、室内の空気が汚れてしまい、シックハウス症候群など、健康被害の増加が指摘されるようになったのです。そこで、2003年に建築基準法が改正され、住宅に限らず“居室のある建築物”すべてに24時間換気システムの設置が義務付けられました。
24時間換気システムに関しては、換気回数の基準も設けられており、住宅の場合「1時間あたり0.5回以上」が必要条件になっています。これは、1時間換気したとすれば、室内の空気の半分が入れ替わる計算です。24時間換気の義務化は、住宅の高気密化によって快適性が高まる一方で、建材に含まれる化学物質やホコリ、ダニなどによる空気の汚れでシックハウス症候群を引き起こすなど、人の健康被害が目立つようになったからです。シックハウス症候群は、頭痛・めまい・喉の痛み・湿疹などの体調不良を引き起こす恐れがあるので、人が快適かつ健康的に暮らしていくためのアイテムとして、24時間換気が必須となっているのです。
ただ、住宅には必ず設置しなければならない24時間換気システムが、防音対策の面で考えると、大きな弱点になってしまう可能性があるのです。以下で、24時間換気の問題点について考えていきましょう。
24時間換気システムは騒音の侵入口となる
それでは、24時間換気システムが、防音上の弱点になってしまう理由について解説していきます。冒頭でご紹介したように、高気密は家に隙間が少ないことを指していて、高断熱はふんだんに断熱材が使用されていることを意味しますので、家そのものの防音性能は非常に高くなっていると考えられます。我々のような防音工事業者が作る防音室に関しても、可能な限り防音室に隙間が生じないようにして、壁の中には隙間なく断熱材(吸音材)を施工することで、高い防音環境を実現しています。
つまり、高気密・高断熱の家というのは、本格的な防音室とまではいかないものの、通常の戸建て住宅よりは高い防音性能をもっており、人の声などの空気音であれば、かなり軽減することができる優れた住宅と考えられるのです。しかし、上述した24時間換気システムが導入されていることで、高い防音環境が崩されてしまうのです。
換気口は、外からの音をそのまま伝える
皆さんのご自宅にも、室内側・室外側に以下のような換気口がついていると思います。
これが、24時間換気を実現するために取り付けられている換気口です。そして、上の左側の画像を見ていただければわかるように、24時間換気システムの換気口は、部屋の内外を結ぶ単なる穴となりますので、この穴に何の対策も施していないのであれば、この換気口が音の侵入・漏れの原因となってしまうのです。
一見すると、きちんと塞がれているように見えますが、空気が通らなければ意味が無いので、通常は空洞になっています。そして、音は小さな隙間からでも伝わってしまいますので、こういった部分が騒音問題の原因となるのです。最近では、外から侵入する人の声を防止するため、窓の防音対策などを施す方が多いのですが、24時間換気システムを無視してしまうと、窓の防音対策をおこなっても、期待していたような防音性能が得られないとなってしまう恐れがあります。
換気口の防音対策は可能?
それでは、2003年以降に建てられた住宅では、必ず設置されることになる24時間換気システムについて、外からの音の侵入に悩んだ場合、どのようにして対策を施せば良いのかをご紹介します。上述しているように、24時間換気のために設置されている換気口は、何の対策もしなければ、単に壁に穴があいている状態で、音は侵入し放題になっています。
防音の基本で考えれば「音の通り道を塞ぐ」というのが正解な訳ですので、音に悩んだ場合、この「換気口を塞いでしまう」のが正しい対策だと考えてしまうかもしれませんね。しかし、その考えは間違っており、換気口からの音の侵入を防ぎたいと思っても、24時間換気のための換気口の穴を塞ぐ行為は絶対にしてはいけません。
住宅に設置されている換気口は、意味なくつけられているのではなく、室内にいる人の健康的な生活を守るのが目的で、この換気口があるおかげで、ハウスダストウやカビ、ダニなどが原因となるシックハウス症候群が防止できるのです。したがって、換気口を閉じることで対策をするのはやめてください。
防音業界では、住宅内に存在する、さまざまな防音上の弱点について、きちんとその問題を解消するためのアイテムが開発されています。そして、換気口についても、きちんと音の侵入、音漏れを防ぐためのアイテムが販売されているのです。
換気口の防音対策アイテムについて
画像引用:モノタロウ
実は、ネット通販などで、上記のようなレンコン状の吸音材が販売されています。要は、換気口の穴に、上図のような吸音材を設置することで、外からの音が換気口内で軽減され、室内では気にならない程度の音にまで小さくなるという感じです。
ご自宅の24時間換気システムについては、フィルターなどの掃除のため、室内側のカバーが外れるようになっているはずです。したがって、まずは室内側のカバーを外してみてください。そして、換気口の中に何も納まっておらず、外がそのままのぞけるといった感じになっていれば、換気口の防音対策がなされていないという意味です。
この場合、外からの音は換気口を通ってそのまま伝わってしまいますし、室内で発生させた音も、外に漏れて行ってしまいます。したがって、上図のようなダクト用の吸音材を詰め込んで対策を施しましょう。なお、壁厚によっては、吸音材を2個ほど設置できるケースがあるのですが、その場合は2個設置しておくのがオススメです。また、きちんとダクトの直径を計って、ちょうど良い大きさの物を用意してください。音は、ほんの小さな隙間から伝わってしまいますので、ダクトと吸音材の間に隙間が生じてしまうと、本来得られるはずの防音効果が得られなくなる可能性があります。
ちなみに、換気口が騒音の侵入口になるという情報が出回るようになった現在では、防音仕様の換気口が販売されるようになっています。このタイプの換気口は、空気の通り道としての機能を維持したまま、空気音の侵入は防ぐ構造になっていますので、24時間換気システムが防音上の弱点にならない製品となります。したがって、これから新築住宅の購入を検討している方は、換気口について防音仕様の物にしてほしいと要望を出すのがおすすめです。
まとめ
今回は、高性能化が進む日本の住宅の中に潜む、防音対策上の弱点について解説してきました。この記事でご紹介しているように、近年の新築業界では、高気密・高断熱がキーワードとなっており、住宅そのものが持つ防音性能は、一昔前の家とは比較にならないほど高くなっています。実際に、人の話し声程度の空気音であれば、わざと大声を出すといった行為が無ければ、トラブルに発展する可能性はそこまで高くありません。
しかし、住宅の高気密化が進むにつれ、室内の空気の汚れが原因となるシックハウス症候群など、人の健康被害が多く報告されるようになり、その対策として24時間換気システムの設置が義務化されることになったのです。24時間換気システムそのものに関しては、室内の空気を清潔に保ってくれるものですので、人の健康的な生活を守るためには非常にありがたい装置だと考えても良いでしょう。ただ、24時間換気のために設置される換気口は、屋外と屋内をつなぐ穴となってしまうことから、防音対策を何もしなければ音漏れや騒音の侵入口となってしまうのです。
近年では、人々の生活空間が近くなったことで、生活音による騒音問題が多くなっており、窓や壁など、部分的な防音工事を行う人が非常に多くなっています。ただ、外から侵入する騒音を防止するため、窓の防音対策を行ったとしても、24時間換気の換気口を放置していた場合、換気口からの音漏れが残るので注意しましょう。防音対策は、音の侵入口を特定し、適切な対策を施さなければ、最大の効果を発揮することができません。この辺りは、専門知識が無いと適切な判断が難しいですので、音の問題に悩んだ時には、お気軽に阪神防音までお問い合わせください。