騒音の悩みは警察に被害届を出しても良いの?騒音トラブル解決の最終手段とは?
人々の生活空間が近くなっている現在では、騒音にまつわる近隣トラブルが急増していると言われています。実際に、弊社のような防音工事業者にも、近隣騒音の悩みを解決したい…と言った相談の問い合わせが増えています。
ただ、騒音を原因として防音工事を検討している方の中には、「迷惑をかけられている自分がなぜ費用をかけて対策しなければいけないの?」と疑問に感じる方も多いようです。そもそも騒音を原因としたご近所トラブルについては、どのようにして解決するのが正解なのかイマイチ分からないという方が多いと思います。
マンションなどの集合住宅の場合、管理会社などに相談すれば、騒音を出している住人に対して、何らかの対処をしてもらうことができます。しかし、管理会社からの注意があっても、騒音が収まらず、「上の階の足音で夜も眠れない…」「夜中に人が集まってうるさい…」などと睡眠障害などの健康被害に繋がってしまうケースもあるようです。このような場合には、騒音主の家に乗り込んで苦情を言いたくなる…という方もいますが、それによって余計に大きなトラブルになる可能性もあるので「泣き寝入りするしかないのかな…」と困ってしまうものです。
実は、こういったご近所同士の騒音トラブルについては、警察に相談することで解決に向かうケースも少なくないようです。騒音問題を警察に相談するというのは、なかなか勇気のいる決断ですが、健康被害が出る前に最終手段として検討するのも良いと思います。そこでこの記事では、騒音を原因に警察に被害届を出せるのかについて解説します。
騒音問題って警察に相談できるの?
それではまず、騒音に関する問題を警察に相談しても良いものなのかという点を解説していきましょう。一般的に、騒音の相談先は、以下のような感じになります。
- マンションなどの集合住宅
集合住宅の場合、管理会社に騒音の苦情を相談するのが一般的です。管理会社は、物件に住む人の住環境を守ることが業務ですので、騒音に関する相談をすれば、解決のために動いてくれます。 - 一戸建て住宅の場合
戸建て住宅に住む方の場合、自治体の相談窓口などに足を運ぶのが一般的です。ただ、集合住宅の管理会社などと比較すると、騒音への対処などは遅くなる傾向があります。
一般的に、騒音に悩まされたときには、上記のような場所に相談するケースが多いはずです。しかし、残念なことに、こういった対処を行ったとしても、即座に騒音問題が解消されるケースの方が少ないと考えた方が良いです。例えば、集合住宅の場合は、掲示板に警告文を掲示する⇒騒音への注意文書を全戸に配布する⇒(それでも音がおさまらない場合)騒音主に騒音に関する警告文を配布と言った流れで対処が進みます。つまり、騒音主が「自分が騒音の苦情を言われている」ということを認識するまでに数カ月の時間を要する場合がほとんどなのです。
管理会社に相談したのに、騒音問題が解消されなかった時には、「警察に通報してやろうかな…」と考える人も多いのではないでしょうか?しかし、事件でもないに警察に通報しても、何の対処もしてもらえないのではないか…と考える方が多いようです。
結論からご紹介しますが、「度を越した騒音で、夜も寝ることができない…」「毎晩のように大騒ぎしていて、ストレスで体調を壊しそう…」など、健康被害にまで発展しそうな騒音の場合は、警察に通報しても問題ありません。もちろん、警察に相談したからといって、騒音主の生活態度を改めさせるような特別な対処をするのではなく、基本的に注意のみで終わると思います。ただ、騒音主側からすると、「自分は警察を呼ばれるような不味い事をしているのか…」と認識するはずですので、その後は騒音が収まる可能性もなくはないはずです。
そして、警察から注意があったのに、それを無視するという場合、法律違反に該当する可能性が出てくるのです。
騒音は条件が揃うと犯罪になり得る?
音の問題が難しいところは、同じ音を聞いている場合でも、「うるさい」と感じる人と「何も気にならない」と感じる人など、人によって受け取り方が全く異なる点です。例えば、音楽を聴きたいと思っている人にはストレス解消などに役立つかもしれませんが、そうではない人にとっては音楽も騒音というストレス原因になってしまいます。
しかし、騒音問題については、「騒音問題が原因で手を出してしまった…」などと言ったケースでもない限り、音を出している人が罪に問われるようなことはないとほとんどの方が考えています。ただ、『騒音』については、いくつかの条件が揃うと、犯罪として扱われるケースがあるのです。
ここでは、騒音問題から、どのような事態になれば犯罪になるのかを簡単に解説します。
騒音に関して警察から注意されたのに無視する⇒軽犯罪法違反に!?
騒音問題は、軽犯罪法内で定められている『静音妨害の罪』にあたります。
軽犯罪法は、軽度の秩序違反に対する罪を定めている法律で、この法律の第一条14では、以下のように記載されています。
第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
十四 公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者
引用:e-Gov|軽犯罪法
軽犯罪法では、上記のように警察などの公務員が制止しているにもかかわらず、楽器や大声などの騒音で近隣の人に迷惑をかけたものについては、犯罪にあたると明確に定めています。
ここでポイントになるのが「公務員の制止をきかずに」という点ですね。要は、騒音に悩まされている人が、警察に通報し、警察が注意したのに、騒音を出すのをやめなかったというのが犯罪にあたる条件になるわけです。何度か警察に通報し、警察がきちんと注意したのにもかかわらず、何の対応もしなかった…という事実があれば、「拘留もしくは科料を課せられる」可能性があると言えます。
傷害罪にあたる場合もある
騒音については、悪質な場合、傷害罪にあたると判断されるケースがあると言われています。
一般的に、傷害罪と聞くと、人を殴ってけがをさせる…など、直接的な暴力をふるったなどと言った場合に成立する犯罪と考えられています。そのため、「単に大きな音を出していた」という騒音問題について、これがなぜ傷害罪にあたる可能性があるのだ…?と不思議に思ってしまう方が多いはずです。しかし実は、傷害罪というのは直接的かつ身体的なダメージだけでなく「精神的なダメージを与えた」という場合にも、傷害罪にあたると判断されるケースがあるようです。
騒音以外にも、職場などで部下を必要以上に追い詰めてしまい、『うつ病』などの精神障害状態にした…と言った場合にも、傷害罪に問われてしまったというケースがあるようです。また、騒音に関しても、過去に、1年半以上及び騒音を出し続けたという人が、傷害罪で逮捕されたという事例が存在します。
騒音に悩んでいる方は警察に『被害届』を出すのも有効
一般の方からすると、警察のお世話になる機会などほとんどありませんし、どのようなことまで相談できるのか想像もできないという方が多いかもしれません。特に『被害届』などについては、言葉だけは耳にしたことがあるけれど、実際に自分が出すようなことはないと考えているのではないでしょうか?
被害届は、その名称通り「犯罪の被害に遭った事を警察に知らせる書類」で、騒音問題と関連性はあまり感じないですよね。しかし、前項でご紹介したように、騒音も犯罪の一つになりうる問題で、度を越した騒音となると、被害届を出すことも可能なのです。ここでは、騒音問題について、被害届を出すメリットなどについてご紹介します。
警察が動いてくれる可能性が高くなる
騒音に悩んだ際に、警察に相談することを考えると、その場で通報するという行為と被害届を提出する行為は、大きな違いはないと言えます。どちらの手段で警察に相談しても、あなたが騒音に悩んでいるということを伝えることができ、誰が苦情を言ったのかを秘密にした状態で騒音主へなんらかの行動を行ってくれるはずです。
こう聞くと、「普通に通報だけで良いのでは…被害届と聞くと大げさに感じるし…」と思うかもしれません。ただ、通報は、その時点で起きている問題に対して警察に相談する行為で、被害届は、現行犯でなくても対処してもらうことができるという違いが存在します。
例えば、通報の場合、その時点で生じている騒音について、「迷惑になるから音を小さくしなさい!」と注意してくれるだけで、もし音が収まっていればあなたに事情を聞くだけで終わる可能性もあるでしょう。これが被害届を提出していれば、いざ通報を行った際に騒音がなくなっていたとしても、騒音主に対して事情聴取を行うなど、より厳しく対処してもらえる可能性があるのです。
被害届と聞くと、大げさに感じますが、度を越した騒音に悩んでいる場合は、問題解決に有効な方法かもしれませんよ。
被害届を出すのであれば、きちんと証拠を残しておく!
被害届を出したいと考えたら、最寄りの警察署や交番に足を運びましょう。警察署や交番に被害届が用意されていますので、そこで必要事項を記入することで提出することができます。
しかし、被害届を受理してもらえるかどうかは、証拠などがきちんと揃っているのかが大切です。例えば、何の準備もせずに警察署に行き、「隣人がうるさい」とだけ記入して提出しようとしても、さすがに被害届を受理してもらうことができないでしょう。騒音を原因として被害届を提出する場合には、警察側が「確かにこれは問題がある!」と断定できるような証拠を用意しておく必要があります。
騒音問題を原因として被害届を提出する場合は、以下のような証拠を用意しておきましょう。
- 騒音の被害状況がわかる動画データや音声データ
- 騒音による健康被害があれば、その診断書
- 騒音被害を受けた日時がわかるような記録(日記などでもOK)
- 騒音レベルを測定したデータ
こういったデータを用意しておけば、警察側も騒音による問題を客観的に判断できるようになりますので、被害届を受理してもらいやすくなります。
まとめ
今回は、隣人が生じさせる騒音に悩んでいる方に向け、騒音問題解決のための最終手段について解説しました。
この記事でご紹介したように、健康被害の不安があるような度を越した騒音については、警察に相談することで早期の解決を目指すことが可能です。ただし、警察の対応については、確実に対処してもらえるとは限りませんので、その点は注意しましょう。
なお、警察に相談しても騒音がおさまらない…なんて場合は、我々のような防音工事に業者に依頼して、防音工事を行うのがオススメです。