新築一戸建ての防音対策について!騒音トラブルを防止するための新築時の注意点
今回は、新築一戸建てにおける防音対策について解説していきます。
戸建て住宅でも、家と家の距離が近くなっている現在では、故意に出した大きな音ではなく、何気ない生活音が原因となる騒音トラブルが増加していると言われています。一般的には、各家庭が構造物でつながっている集合住宅と比較すると、一戸建て住宅は騒音に悩まされる心配は少ないと考える方が多いです。しかし、建築技術や建材が飛躍的に進化した現在でも、戸建て住宅での騒音を原因とした隣人トラブルはなくなっていません。
そこで当コラムでは、これから新築一戸建て住宅を建てようと考えている方に向け、新築時に注意しておきたい騒音トラブルを防止するためのポイントを解説します。
新築一戸建ての防音対策の必要性について
冒頭でご紹介したように、一戸建てに対するイメージとして「集合住宅と異なり音の問題は心配しなくても良い!」と考えている人が多いです。しかし、現在の新築事情を考えてみると、このようなイメージは間違いと言わざるを得ません。
そもそも騒音問題の難しい点は、「騒音と感じる音のレベル」が人によって異なるということです。楽器や大きな話し声などは騒音ととられるケースが多いのですが、中にはエアコンの室外機の音や洗濯機・掃除機の稼働音と言った生活音ですら騒音と捉える方がいます。
音は、たとえ自分にとっては気にならないレベルの音でも、他人からすれば不快な騒音と感じてしまう可能性があるということを忘れてはいけません。なお、日常生活の中で、人が不快に感じないレベルの騒音については、環境省が環境基準の中で示しています。それによると、生活において望ましい音量は“住宅地の場合、昼間であれば55デシベル以下、夜間は45デシベル以下とすること”という基準が望ましいとされています。ちなみに、音量のレベルが分かりやすいように例をあげると、走行中の自動車の中が60dB程度、換気扇の稼働音が50dB程度、図書館の中が40dB程度とされています。
私たちを取り巻く騒音の種類について
一口に『騒音』と言っても、私たちを取り巻く環境の中にはさまざまな種類の音が存在します。実は騒音と呼ばれる音にも、以下の3つの種類の音が存在するのです。
- 空気音(空気伝播音)
空気を伝わる音を指しています。日常生活と切り離せない音で、外から聞こえてくる人の声や犬の鳴き声、雷の音、救急車のサイレンなどが空気音にあたります。 - 固体音(固体伝播音)
地面や床、壁を振動させて伝わる音を指しています。足音や水回りの音(配管の振動)などの生活音、近所のドラムの音など、物を振動させて伝わってくるものが固体音にあたります。 - 空気音と固体音が合わさった混合音
上記の要素が両方ある音で、工事現場の音や大型トラックの走行音など、直接的に耳に届き、なおかつ壁や床を伝わって響く音のことを指します。
私たちの日常生活は、上記のようなさまざまな音が存在しています。そして、建物の構造などによって伝わり方が異なります。
新築時から防音対策に着目するのがおすすめ
防音対策の中には、実際に音の問題が発生してからでも、意外に簡単に対策が施せるものも存在します。しかし、場合によっては、既存の壁を一度解体して作り替えたり、建物の構造自体を強化しなければならないケースもあるのです。
当たり前の事ですが、一度家を建てた後に、壁を解体し作り直す場合と、新築時にきちんと対策を施しておくことを比較すると、後者の方が解体工事が不要になる分、コスト負担を抑えられます。したがって、「静かで快適な環境を望んでいる」という方や、何らかの理由で将来的に防音対策を検討しようとお考えの方は、新築時から防音対策を取り入れておくことがおすすめです。
新築時に注目したい防音上のポイント
それでは、静かで快適な住空間を作るため、新築時に注目したい防音上のポイントについて解説します。
高気密性・高断熱性を目指す
一般的に、高気密・高断熱の住宅ほど、防音性能は高くなります。高気密ということは、建物に生じる隙間が少なくなるという意味なので、外からの音を気密性の高い壁が遮ってくれるようになります。さらに、高断熱も実現していれば、跳ね返しきれなかった音を壁の中の断熱材が吸音してくれるため、家の中に入ってくる音をかなり軽減することが可能です。
近年の新築業界では、狭小地に三階建ての住宅を建築するケースが多くなっていますので、家と家の距離が近くなっていることから、ちょっとした生活音が気になってしまうことも多いです。高気密・高断熱を実現していれば、生活音レベルの騒音なら、気にならない程度まで小さくしてくれると思います。
ちなみに、高気密・高断熱の家は、空調効率が良くなるので、冬場や夏場のエアコン代を安くしてくれるという効果も期待できます。
建築構造について
建物の防音性能は、建築構造の違いでかなり異なります。新築ならではの防音対策となるのですが、防音性の高い建築構造を選ぶことで、静かな住環境を作り出すことができます。
例えば、RC造やSRC造といった鉄筋コンクリートは、何本もの鉄の骨組みにコンクリートを流し込んでいるため、密度が高く、防音性が高くなると言われています。皆さんも、木造の戸建て住宅よりも、鉄筋コンクリート造のマンションの方が防音性が高いという話を聞いたことがあると思います。
木造住宅というのは、主要な建材が木材となりますので、通気性が良くなるという特徴があります。ただ、通気性が良いということは、その分音も通しやすいという意味ですので、防音性能の面ではどうしても弱点になってしまう訳です。
したがって、どうしても高い防音性を求めたいという場合は、RC造やSRC造を選ぶと良いでしょう。注意が必要なのは、建築構造の違いは、建築コストにかなりの影響を与えますので、木造よりも確実にコストがかかる点です。
間取りをよく検討する
注文住宅の場合は、騒音が気にならないように間取りに注意しましょう。例えば、家族が長い時間を過ごすことになるリビングの真上に、子供部屋を配置すると、子供の足音で落ち着かない…なんてことになりかねません。また、寝室の真横にトイレを配置すると、夜中にトイレの排水音で起こされてしまう…なんてことも考えられます。
住宅の間取りの問題は、家族間の騒音問題を防ぐだけでなく、対外的な音の問題にも有効です。例えば、自宅で楽器の演奏を行いたいという場合でも、夜間や長時間の演奏を行う予定はないので、防音室までは作らないというケースも考えられるでしょう。しかし、何の対策もしていなければ、隣家に楽器音が聞こえてしまい、トラブルになる可能性があります。こういった問題についても、間取りを検討することである程度の対策が可能です。例えば、右隣は他の住宅があるけど、左隣りは道路になっているという住宅の場合、道路側の部屋で楽器の演奏を行えば、隣人の家と距離を確保できるので音が伝わりにくくなります。住宅の間取りは、自分たちの生活のことに着目して検討する方が多いのですが、実は、こういった音の問題にも着目することで、余計な騒音トラブルを起こしにくい状況を作ることができます。
防音上の弱点を補強しておく
どのような建物でも、騒音が伝わりやすい部分が存在します。したがって、静かで快適な住環境を実現するためには、騒音が伝わる原因になっていると考えられる部分ごとに、必要な対策を最初から取っておくということが大切です。例えば、外部からの騒音の侵入は窓や換気口が弱点になりやすく、一般的な床や壁、天井などは室内外の音が響きやすいので、音が伝わりやすいです。
したがって、騒音問題を防ぐためには、壁や床、天井を二重構造にするなどして、建物そのものの防音性能を向上させておくのがおすすめです。こういった対策をきちんと取っておけば、屋内で発生した音が外に漏れていくことも防げます。
次は、窓や換気口部分の対策です。現在では、住宅の気密性が高くなっていることから、法律で24時間換気システムの設置が義務付けられています。したがって、どの部屋にも換気口が取り付けられているのですが、この換気口は屋外の新鮮な空気を取り込むためのものとなるので、音も一緒に入ってきてしまいます。つまり、換気口の対策を何も行っていなければ、この部分から音漏れや音の侵入があり、騒音に悩まされてしまう恐れがあるのです。なお、換気口には、防音仕様のものが存在しますので、新築時に防音性の高い物を設置してもらうと、この部分の弱点を解消することができるでしょう。
最後は、窓についてです。窓は、壁と比較すると非常に薄い素材となるため、音が通過しやすく、防音上の弱点になり得ます。さらに、スムーズに開閉できるように、きちんと閉めていても隙間が生じるような構造になっているので、完全に音を遮音することはできないと考えなければいけません。したがって、窓部分の防音性を高めるため、防音ガラスなど、特殊なガラスを採用するとか、特に静かな環境が望ましい部屋は、二重窓を採用するなどと言った対策を行うのがおすすめです。
このように、住宅には、防音上の弱点が存在しますので、新築時にできる限り対策を行っておくのがおすすめです。
子供の遊び場として畳スペースを作る
最後は、小さなお子様がいるご家庭にオススメの対策です。小さなお子様がいるご家庭では、家の中で遊ばせるときの音が、近所の方に迷惑をかけていないかと心配になるというケースがあります。また、テレワークが一般化している現在では、子供が生じさせる騒音で仕事に集中できない…と言った声も聞こえてきます。
こういった方にオススメなのが、畳を敷いた子供用の遊び場を設けておくという対策です。実は、畳に利用されるイグサの繊維には吸音効果があると言われていて、畳の部屋で遊ばせていれば、ある程度音を軽減してくれると言われています。また、フローリングなどと比較すると、足音も響きにくいというメリットがありますし、ご家族間の騒音も軽減することが可能です。
まとめ
今回は、新築時に検討しておきたい戸建て住宅での防音対策について解説しました。現在では、建築技術の向上や建築資材の高性能化などの影響もあり、一昔前の木造住宅と比較すれば、防音性能はかなり向上しています。
しかし、家と家の距離が非常に近くなっていることから、防音性能が向上したとしても、隣人と騒音問題を抱えている人が増えているというのが実情のようです。多くの方は、「戸建てに引っ越せば騒音トラブルの心配はない!」と考えているようですが、一昔前の庭付き一戸建てのように、隣家との距離がそれなりに離れているという状況以外は、騒音の心配があると考えるべきです。
この記事では、新築時に行っておきたい防音対策をご紹介していますが、ここで紹介した対策は、あくまでも生活音レベルを防げる程度の防音対策と考えてください。防音の目的が、自宅で楽器の演奏をしたいとか、ホームシアターやカラオケを楽しみたいなど、生活音とは比較にならないほど大きな音が生じるとなると、簡易的な防音対策では不十分です。このような場合には、専用の防音室を用意しなければ、ご近所さんに音で迷惑をかけてしまう結果になるでしょう。