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和室は音の問題を抱える可能性が高い?ふすまの防音対策をご紹介します

今回は、住宅の防音対策の中でも、効果を出すのが非常に難しいと言われる和室の防音対策について解説していきます。

近年建てられる住宅は、高気密・高断熱化が進んでおり、非常に高い防音性能を発揮するようになっていると言われています。実際に、住宅の防音上の弱点になりがちな窓に関しても、気密性が高くなったことから、新築時であれば窓からの音漏れや音の侵入に悩まされる方はかなり少なくなったと言われています。
しかし、これは住宅の外側との音の関係についてであり、住宅内に住む家族間の音の問題については、現在の住宅でもそこまで大きな違いはないと言っても良いでしょう。例えば、一般住宅に取り付けられている室内ドアは、ドアを閉めていても適切な換気が行われるように下部に隙間が生じるような作りになっています。コロナ禍で人々の在宅時間が長くなってきた現在では、こういった家族間の音の問題を抱える方が非常に多くなっており、弊社のような防音工事業者に相談してくるお客様が増えています。

特に、音の問題を抱えやすいのが、日本特有の和室です。和室は、ふすまや障子で仕切られているのですが、これらは通常のドア・窓と比較しても、隙間が非常に多く、ちょっとした音でも筒抜けになってしまうという弱点を持っています。実際に、弊社にも「ふすまがある部屋の防音をしたいのですが、可能なのですか?」といった問い合わせは意外に多いです。
そこでこの記事では、お悩みの方が多い和室の防音について、自分でも可能なふすまの防音対策や、本格的な防音リフォームをご紹介します。

和室(ふすま)の防音上の弱点について

現在、新築される住宅に関しては、わざわざ和室を設けるようなケースも少なくなっていますので、ふすまのある和室の防音上の弱点に気付いていない方も多いかもしれませんね。しかし、年々ふすまのある和室の数は減っていると思われるのですが、それでも「ふすまの防音は可能ですか?」と言った問い合わせは、現在でもそれなりの件数になります。ちなみに、自宅にふすまのある部屋が無いという方は、この記事はあまり関係ないと思うかもしれませんね。ただ、今後ふすまのある家に住む可能性はあると思いますので、ぜひ最後まで読んでいただけたらと思います。

まず皆さんに覚えておいてほしいのは、ふすまや障子が使用されている和室の防音性が低い理由です。実は、以下のような事が要因で、どうしても防音性が低くなってしまいます。

  • ふすまや障子は、一般的なドアと比較すると、隙間が生じやすく気密性が低い
  • ふすまや障子は、軽い・薄い建材となるので木材などが使用されるドアよりも音を通しやすい

このように、和室の間仕切りとして利用されるふすまや障子は、構造上の問題から隙間が生じやすい、材質的に音を通しやすいという弱点を持っていることで、防音性能が低くなるという大きなデメリットを持っています。ちなみに、なぜ和室がこういった構造になっているのかについては、日本の気候にあわせることが考えられていたというのが大きいのだと思います。皆さんもご存知の通り、日本の気候は四季があり、夏場は高温多湿になるという特徴があります。木造建築が多い日本の住宅は、湿気をうまく逃がさなければ、家そのものが早期に劣化してしまうことになりますので、換気を良くすることが重視されていたという歴史があります。例えば、大河ドラマなど、時代劇をよく見る方ならわかると思いますが、その時代の日本家屋は、壁すら設けられておらず、夜間は雨戸をはめ込むことで防犯を行うような構造になっています。つまり、日本家屋というものは、防音性能よりも湿気を逃がすための換気性能が重要だと考えられてきたため、その名残が残っていることで和室の防音性に期待できないわけです。

なお、ふすまや障子が採用されている和室だからと言って、絶対に防音性能があげられないかというと、そうではありませんよ。上述したような、ふすまの弱点をきちんと理解して、その弱点を補ってあげることで、和室でも静かな環境をつくることは可能です。以下で、和室の防音対策について、具体的な手段をいくつかご紹介します。

和室(ふすま)の防音対策とは?

それでは、ふすまなどによって防音性能が低くなってしまう和室の防音対策をご紹介します。ここでは、お客様ご自身でも可能な簡易的な対策から、我々のような専門業者に依頼しなければならない対策まで、いくつかの種類に分けてご紹介します。

防音対策は、「どのような音をどこまで改善したいのか?」によって必要な対策が大きく異なります。例えば、楽器の演奏を目的に防音対策を行う場合と、テレワークに集中するための防音対策では、必要とする防音性能は大きく変わりますよね。この部分を明確にせず、防音工事を依頼してしまうと、本来必要のないオーバースペックの防音工事に多額の費用をかけてしまうことになります。したがって、防音対策を検討する時には、まず最初に、ご自身の防音の目的や要望を明確にしなければならないと考えてください。

①隙間テープを使って隙間を埋める

一つ目の対策は、お客様自身で対策可能な方法です。最近では、ホームセンターや100円均一などに行けば、『隙間テープ』なるものが販売されています。この商品は、主に窓やドアに生じる隙間を埋めて、外部からの騒音の侵入を防ぐ目的で使用されます。

上述しているように、ふすまなどの防音性の低さは、きちんと閉めていても隙間が生じてしまう構造が大きな要因です。窓についても、閉めていても隙間が生じてしまうため、音漏れや侵入の原因になるという話を聞いたことがあると思うのですが、ふすまや障子はそれが顕著です。実際に、ふすまはきちんと閉めても、人間の目でもわかるぐらいの隙間が生じてしまっていることも少なくありません。また、ふすまのようなスライドタイプの間仕切りは、開閉がスムーズになるように、ワザと隙間が生じるような構造になっています。つまり、和室はそもそもの構造的な問題から音が駄々洩れになってしまう訳ですね。

逆に考えれば、ふすまや障子にできている隙間をきちんと埋めてあげることで、その部分からの音の出入りを防ぐことができるようになります。この対策は、隣の部屋の人の話し声を聞こえにくくする、TVの音を漏らさないようにしたいなど、簡易的な防音目的であれば試してみる価値があると思います。ただ、それなりの防音性能が欲しい場合には、隙間を埋めるだけではあまり意味がありません。

※ふすまや障子の防音対策については、対策を施すことで開閉が難しくなるものが多いです。したがって、頻繁に出入りがある場所については、本格的なリフォームが必要と考えてください。

②ふすまの内側に吸音材を貼る

これは、和室内で発生する音を、外に漏らさないようにしたいという場合の対策です。この対策も非常に単純で、お客様自身で可能です。具体的には、ふすまの室内側に吸音材を貼り付けるという方法です。最近では、ホームセンターなどに、ボードタイプの吸音材が販売されていて、素人の方でも簡単に設置できるようなものが多くなっています。そういったものを購入し、室内側に貼り付けておけば、外に漏れる音を軽減することができるという訳です。ただ、ふすまに吸音材を貼り付けるわけですので、和室の雰囲気が大きく崩れる、基本的に吸音材を貼り付けたふすまは開閉できなくなるという点には注意してください。

和室内からの音漏れ対策としては、非常に簡単で、あまりコストもかからない方法ですが、そこまで高い防音性能は見込めないと考えてください。あくまでも簡易的な対策で、テレワーク中の声を軽減する程度の目的なら有効ぐらいな感じです。

③防音カーテンを設置する

ここからは、少しリフォーム感が出てきます。和室の雰囲気が壊れても、とにかく防音性能を高めたいという場合、ふすまの手前にカーテンレールなどを設置し、防音カーテンを取り付けると良いでしょう。この方法は、窓部分の防音対策としても良く採用されている方法で、開口部の防音対策としては有名です。

防音カーテンによる対策については、設置するカーテンのグレードによってその効果がかなり変わります。高品質な防音カーテンであれば、それなりの価格になりますが、ある程度の雑音や人の話し声であれば、気にならないぐらいにまでは軽減してくれると思います。防音対策の目的が、隣の部屋の雑音を軽減したい程度であれば、この方法はオススメです。

上述した、隙間テープや吸音材の設置と言った対策の場合、開閉が難しくなって出入りがしにくくなる点が致命的な問題です。したがって、出入口になっていて①や②の対策がとれない場合は、カーテンで対応するのが良いかもしれません。

④不要な部分は塞ぐ

和室の中には、複数の面がふすまで仕切られているケースが考えられます。このような和室の防音対策を検討した時に、出入りのために1箇所だけ残っていれば良いという場合は、可能な限りふすまを防音壁で塞ぐという対策がオススメです。最近では、素人の方でも簡単に設置できる防音パネルなどが販売されていますので、そういったアイテムを使って、不用なふすまを壁にするという対策です。

ただ、DIYで防音壁を作る場合、どうしても小さな隙間が生じてしまい、その部分からの音漏れが残ってしまうなどと言ったミスも多いです。したがって、それなりに高性能な防音室にしたいという場合は、専門業者に依頼して防音壁に作り替えてもらうのがオススメです。

⑤和室に本格的な防音工事を施す

最後は、我々のような防音工事業者に依頼して本格的な防音工事を行うという対策です。上で紹介したような方法であれば、和室に生じる隙間を完全に塞ぐことはできませんし、そこまで高い防音性能を実現するのは難しいです。実際に、弊社に防音工事の相談をしてきたお客様の中にも、自分でいくつかの対策を行ったものの、音が軽減できなかったと話す方が非常に多くいました。

ちなみに、専門業者に依頼して防音工事を行う場合でも、いくつかの手段が考えられます。例えば、楽器用防音室までの性能は必要ないという場合、音漏れの原因となっているふすまをやめ、開き戸タイプのドアに交換するという手段が最もコスパが良いと思います。もちろん、不用になった和室を、楽器用防音室にしたいという要望であれば、本格的な防音壁を作り、高い防音環境を実現するという方法も考えられます。

専門業者に依頼して防音工事を行うのであれば、あなたの要望に合わせた提案をしてくれるはずですので、まずは「どういった用途でその部屋を使いたいのか?」という部分を明確にしましょう。

まとめ

今回は、和室の防音上の問題点と、防音性能を向上させるための対策について解説しました。近年、新築されている戸建てであれば、和室を設けていないケースが多いのですが、築年数がある程度経過した住宅であれば、ふすまが使用されている和室がある家も多いのではないでしょうか?

この記事でご紹介したように、ふすまはきちんと閉めていても隙間がかなり多くできる構造ですので、防音性能の事を考えるとかなり致命的な部屋だと言っても過言ではありません。これは、高温多湿な季節がある日本の住環境の事が考慮されて家が建てられていたのが大きな要因です。近年では、高気密・高断熱が重視されていますが、エアコンなどがまだ普及していない時代は、自然の風を通すことで過ごしやすい環境を作っていたのです。

こういった築年数が経過した日本家屋は、防音上の弱点がそこかしこに存在している可能性がありますので、音の悩みを抱えた時には、自分で解決するのではなく防音工事の専門業者に相談するのがオススメです。