騒音トラブルを防止するには防音工事が有効?そもそも人が不快に感じる騒音に基準はあるの?
日常生活の中で近隣の方とのトラブルを防止するためには、特に騒音に注意しなければならない時代になっています。近年では、マンションなどの集合住宅で生活する方が増えており、各家庭の生活空間が近づいていることから、ちょっとした生活音が原因となる騒音トラブルが増えています。マンションなどの集合住宅は、生活スタイルが異なるさまざまな人が同じ建物内で生活をすることになるため、普通に生活を進めているだけでも、他人にとっては耐え難い騒音を出している可能性があるのです。
特に、コロナ問題以降は、人々の在宅時間が長くなったことから、生活騒音に関するトラブルが急増していると言われています。実際に、我々のような防音工事会社には、本格的な防音室を作りたいといった問い合わせだけでなく、「隣家の騒音に悩んでいるのですが?」「ご近所さんに騒音の苦情を言われたのですが?」と言った、生活騒音トラブルに関する防音工事の依頼が増えています。
そこで当コラムでは、人々の生活空間が近くなってきた今、ご近所さんとの音に関するトラブルを防止するために知っておきたい、人が不快に感じる『騒音』の基準をご紹介したいと思います。
集合住宅でのトラブルは『騒音』が第一位に!
マンションやアパートなどの集合住宅は、生活習慣が異なるさまざまな方が同じ建物内で暮らすことになるため、思わぬことで近隣トラブルに発展してしまうことがあります。日本には「自分の常識は他人の非常識」という俗説があるほどで、自分は普通に生活しているだけなのに、ご近所さんから不快に思われてしまう…という事態は普通にあり得ます。特に、『生活音』に関する問題については、騒音源側が「他人に迷惑をかけている」ということになかなか気付けないこともあり、最終的に警察沙汰にまで発展してしまうことも珍しくありません。
以下に、国土交通省が定期的に行っている「マンション総合調査」のデータをご紹介します。下の表は、マンションなどの集合住宅にて、居住者間で発生したマナーに関するトラブルについて、その原因の割合を示しています。
引用:国土交通省「平成30年マンション総合調査」
上の画像から分かるように、集合住宅で発生する居住者間トラブル原因は、長い間、違法駐車・駐輪が最も多かったようです。しかし、平成30年に行われた調査では、生活音がとうとう第一位になっていて、集合住宅で最も注意しなければならないトラブル原因になっています。さらに、ペット飼育についても、鳴き声や足音に関する問題が含まれていると考えられますので、集合住宅では騒音に関する問題が増加傾向にあると読み取れるでしょう。
こういった音に関する問題については、音を出している側は普通に生活しているだけという意識で、他人に迷惑をかけているとは想像もしていない場合がほとんどだという点が非常に難しい問題となっています。そして、気付かないうちにトラブルメーカーと認識されてしまい、近隣住民との関係が悪化するわけです。
こうならないためには、他人が迷惑・不快と感じるような騒音の基準を知っておき、それを出さないためにどうすれば良いのか、またどうしても生じてしまう音なら、どういった対策をとるべきかを知っておく必要があるでしょう。
人が不快に感じる騒音レベルをおさえておこう!
それでは、人が「うるさい!」「不快だ!」と感じるような騒音は、どのレベルの音量なのか解説します。
注意が必要なのは、そもそも騒音は、人が聞いたときに「騒々しい」「不快だ」と感じるような音を指していますので、その音を聞く人によって「何が騒音に該当するのか?」は変わってしまいます。皆さんも、他の家族がうるさいと感じる音について、自分は特に気にならないといった状況を経験したことはあるのではないでしょうか?
騒音問題の難しさは、人によって音の感じ方が変わってしまうところです。ただ、何の基準も無ければ、際限なく大きな音を出してしまう人が出て来てしまう可能性があるため、騒音レベルというものが作られています。
騒音レベルは、音の大きさを客観的に表すもので、『dB(デシベル)』という単位で決められています。この音量は、騒音計などと呼ばれる機械を使用することで、数値で表示することができ、防音工事などでも、防音室の性能評価を行う時に使われることが多いです。
そして、騒音レベルでは、日常生活の中に存在する音を、いくつかのレベルに分けているので、自分が騒音トラブルの原因にならないようにするためにも、どういった行動でどの程度の音が生じるのかを押さえておくと良いでしょう。
20~30dB 人が静かと感じる音のレベル
まずは「20~30dB」の音です。このレベルの音は、人が静かと感じるような騒音レベルとされています。具体的な音の発生源は、人のささやき声や木の葉がふれあう音などは20dB程度で人の耳にはほとんど聞こえないレベルです。30dBの音は、深夜の郊外に相当する音量とされていて、このレベルでようやく人の耳に非常に小さく聞こえるレベルとされています。
このレベルの騒音であれば、人の耳に聞こえるかどうかの音量ですので、騒音トラブルにはなり得ないと考えても良いでしょう。
40~50dB 日常生活上よくある音で昼間なら問題ないレベル
「40~50dB」の音は、日常生活の中で、誰もが発したり聞いたりするレベルの音となります。ちなみに、環境省が定めている騒音の基準では、「専ら住居の用に供される地域」では、昼間で55dB以内、夜間は45dB以内に抑えるようにとしていますので、「40~50dB」程度の騒音レベルまでは、人が音によるストレスを感じない音量と考えられるでしょう。
なお、この騒音レベルの具体例を紹介すると、40dB程度の音は図書館や閑静な住宅街の昼間に存在する音量、50dB程度は静かな事務所や家庭用エアコンの室外機が発する音のレベルとされています。この騒音レベルであれば、通常の会話をするのに邪魔にならない程度の音量とされています。
ただ注意が必要なのは、上述したように音の感じ方は、人によって異なるという点です。さらに言えば、「どこにいるのか?」「何をしているのか?」によっても、望ましい静けさが異なります。例えば、一般的に室内にいる人が騒音と感じるのが50dB以上とされています。しかし、室内でもリビングや寝室などでゆっくりと過ごしたいという場合には、40dB以下の音量が望ましいとされているのです。先述した環境省の目安でも、夜間なら45dB以内が基準となっているように、騒音と感じられるかどうかは、「昼間か?夜間か?」「音を聞いている人が何をしているのか?」によって異なり、このレベルでも苦情を言われる可能性があると考えてください。
60~70dB 人が「うるさい」と感じるレベル
このレベルになると、騒音トラブルが発生する確率が高くなります。周囲に60dB程度の騒音があれば、かなり大きな声で話さなければ会話が成り立たなくなりますし、高確率で騒音に関するクレームが入るようになるでしょう。
具体的な音の例をご紹介すると、60dB程度は近くで掃除機や洗濯機をかけている時の音や乗用車の車内に存在する音です。70dBまでになると、かなりうるさく感じるレベルで、これはセミの鳴き声、やかんの沸騰音が該当すると言われています。
集合住宅などでは、深夜に掃除機や洗濯機をかけることがマナー違反とされていますが、これほどまでの音が生じるとわかれば、苦情を言いたくなる人の気持ちも理解できるでしょう。
80dB以上 極めてうるさい音量で確実に騒音トラブルに発展するレベル
80dBを超えるような音になると、人は「きわめてうるさい」と感じるレベルです。各家庭の距離が近い集合住宅にて、このレベルの音を頻繁に出すと、ほぼ確実に騒音トラブルに発展すると思います。
80dB以上の具体例をご紹介すると、地下鉄の車内やパチンコ屋の店内が80dB程度とされていますので、すさまじい騒音にさらされているのと同じとよくわかるでしょう。これが90dB程度になると、工場騒音やカラオケレベルで、専用の防音室を用意しなければ周囲に確実に迷惑をかけてしまいます。ちなみに、犬の鳴き声は90dB前後の音量になると言われていますので、室内で飼っていても無駄吠えのしつけなどをしなければ、騒音トラブルの可能性が高くなります。
80dB以上の音となると、日常生活の中で普通に発生する音量ではないので、こういった音を出す可能性がある場合、周囲に配慮するため騒音源側が防音工事をしなければならないと考えておきましょう。
まとめ
今回は、日常生活の中で、近隣住民の方と騒音トラブルを抱えないようにするため、人が「うるさい」「不快だ」と感じる音の大きさについて解説しました。
人々の生活空間が近くなっている現在では、普通に生活をしているだけなのに、ご近所の方に迷惑をかけてしまう可能性が高くなっています。特に、生活音を原因とする騒音トラブルに関しては、騒音を出している側が、それに気づいていないケースが多く、指摘されて初めて自分が他人に迷惑をかけていた事実を知る方が多いようです。これは、どの程度の音量が、他人にとって迷惑になるのかを知らない人が多いの大きな要因だと思いますので、この記事でご紹介した騒音レベルについては皆さんも抑えておくのがオススメです。
なお、自宅で楽器の演奏などを検討している場合、上の騒音レベルの事を考えると、防音室を必ず用意しなければならないということがわかると思います。というのも、楽器が生じさせる音というのは、皆さんが考えている以上に大きく、ほとんどの楽器が100dB前後の音量を発するのです。つまり、周辺の方からすれば「きわめてうるさい!」と判断するような音量となるわけですので、防音室を用意せずに演奏した場合、確実に騒音のクレームが出ると考えなければいけません。