防音工事に関する素朴な疑問にお答えします!
近年では、日本人のライフスタイルが大きく変わってきたことから、楽器の演奏やホームシアター、商業目的などと言った特別な理由が無いような方でも自宅の防音工事を検討する方が多くなっています。
例えば、2020年から続く新型コロナウイルス問題ですが、2023年になった現在でも、感染者数が増加していることがニュースで報道されていて、コロナ以前の社会生活は二度と戻ってこないのではないかと考えられるような情勢です。そして、新型コロナウイルス問題は、テレワークが多くの企業に浸透し、自宅で仕事をする人が増加した、政府や自治体から外出自粛を求められていた期間が長く続いたことで、外食をやめ自宅で食事をする方が増えたなど、日本人の在宅時間が一気に伸びたと言われています。
そして、コロナ問題以前から、日本国内では各家庭の生活空間が近づいていることに起因した騒音トラブルが増加しており、コロナ問題により在宅時間が長くなったことで、音の問題がさらに表面化してきています。こういった状況もあり、今まで自宅の防音工事を検討したこともないという方からのご相談が増えているのですが、こういったお客様は、いくつか共通する疑問を持っているように思えます。
そこで当記事では、最近防音工事に興味を持った方からご質問を受けることが多い、共通するいくつかの疑問とその回答をご紹介します。
防音工事に関するよくある疑問について
それでは、コロナ禍をきっかけに初めて防音工事に興味を持った…というお客様からよく質問されることについて代表的な疑問をご紹介していきましょう。
防音工事は、住宅リフォーム工事の一種なのは間違いないのですが、その他のリフォーム工事とは決定的に異なるポイントがあります。通常のリフォーム工事は、「壁紙を直す」「外壁の塗装を塗りなおす」など、築年数が経過して悪くなった部分を新築時の状態まで戻す工事を指しています。簡単に言うと、マイナスの状態をゼロに戻す工事と言った感じです。
しかし防音工事というのは、住人さんが感じていた音の悩みを解消する機能と付け加えるための工事になります。したがって、防音工事は、ゼロの状態から『防音性』をプラスするための工事になります。
そのため、今まで防音工事について何も知らなかったというお客様からすると、さまざまな疑問が頭によぎってしまうようです。ここでは、初めて防音工事を行うお客様から良くいただく内容について、その答えも一緒にご紹介します。
疑問① 防音室は新築とリフォーム、どっちのタイミングが良い?
コロナ問題以降、大手ハウスメーカーが販売する建売住宅には、テレワークやリモート学習用の防音室が最初から用意されている物件が登場しています。これは、在宅勤務が当たり前となってきたことから、自宅に防音室を求める方が増えていて、その要望に応えるための物件が用意されているわけです。
しかし、防音工事は、一般的に既存の住宅に対して行われもので、空いている部屋を防音室に作り替えるといったリフォーム工事というイメージをもっている方が多いと思います。そのため、防音工事を検討中の方の中には、「新築時に防音室を作っておくのと、リフォームで作るのならどっちが良いのだろう?」という点に疑問を感じる方が多いようです。この問題については、お客様ごとのタイミングもありますので、一概に「絶対に○○が良い!」とは言えないのも事実です。ただ、可能であれば、新築時に防音室を作っておく方がメリットが多いとは思います。
もちろん、防音工事をすることによって出来上がる防音室の性能については、新築であろうがリフォームであろうが、お客様が抱える音の悩みを解消することができるとは思います。ただ、新築の場合は、家の間取りを設計する段階から検討することができるため、日常生活の導線なども考慮して、最も利便性が高く、効率的に防音性を発揮させることができます。注意が必要なのは、防音工事を新築時に行うメリットは、あくまでも注文住宅で家を建てるのならという条件が付きます。というのも、建売住宅の場合、既に出来上がった家を拝見して、気に入ったものを購入するという手法ですので、この場合はリフォームで防音工事するのと何ら変わりがありません。なお、リフォームによる防音工事に関しては、建築基準法などの関係から、お客様が希望する防音性能をどうしても出せない場合がある点も、新築の方がオススメな理由です。
疑問② 防音室をリフォームで作る場合、生活はどうなるのですか?
既存住宅の一室を防音室にリフォームする工事を検討している場合、「工事中、日常生活に支障はないのかな?」という疑問を感じてしまう方も多いです。防音室を作るまでのリフォーム工事となると、工事にかかる期間は、2~4週間程度となりますので、その間、自宅で生活ができるのか…と不安に感じるのも当然のことだと思います。
これに関しては、リフォーム工事期間中は、作業員が家の中に入り作業をするわけですので、「工事中も日常生活に一切の支障はない!」と決して言えなうのが実情です。例えば、防音工事は、既存の壁を一度解体し、壁内に防音材をふんだんに設置することで、壁の防音性を高める、既存のドアを防音ドアに交換するなど、通常の住宅リフォーム以上にたくさんの建材を使用します。そのため、工事期間中は、工事を施す部屋はもちろん、廊下や玄関わきなどに材料を置かせていただくことになりますので、確実に日常生活で不便に感じるケースがあると思います。さらに、工事工程によっては、大きな音が生じる場合もありますので、お客様にはいろいろなご協力をしていただくことになります。
ただし、工事期間中は「ビジネスホテルなどに避難しておく!」と言った対応をする必要はありません。防音工事は、リフォームを施す部屋以外には基本的に立ち入りませんし、工事を行う時間帯もお客様とご相談の上で行います。したがって、日常生活を普通に進めていただく横で、我々が工事を行っているといった感じと考えてください。
疑問③ 防音室の効果のほどは?
防音工事は、一般の住宅リフォームと比較すると、高額なリフォーム工事となることから、「コストをかけるだけの効果が本当にあるのか?」「自分の悩みを解消するにはいくらぐらいかかるのか?」と言った部分に疑問を感じる方が多いです。
防音工事の効果については、お客様とお打ち合わせの上、仕様などを決定し設計しますので、案件ごとに防音性能は大きく異なります。そもそも、防音室の目的が、楽器の演奏のためとホームシアターのためでは、防音室に必要な性能がかなり違いますので、工事にかかるコストも大きな差が出ます。また、同じ楽器防音室でも、ピアノとドラムでは、これまた必要な性能が変わります。
つまり、防音室の効果については、お客様ごとに変わってしまうのですが、基本的に、お客様の防音室の利用用途や、周辺に存在する環境騒音などを総合的に判断したうえで設計を行いますので、お客様の要望通りの効果を持った防音室に仕上がるのは間違いないと考えてください。注意が必要なのは、防音工事会社を名乗る業者の中にも、防音に関する知見や技術が少ない場合があり、そういった業者に工事を依頼した場合、想定していた性能が出ない…、契約書上の性能を発揮しているものの性能が足らない…なんてことになる場合があります。
防音工事の効果について実際に体験してみたい場合は、弊社が作っているような、防音体験ルームに訪問するのがオススメです。体験ルームでは、実際に楽器を鳴らしてみて、その音がどれだけ小さくなるのかを身を持って体験できますので、効果を知りたい場合には最適だと思います。
疑問④ どんな条件でも希望の防音室を作れるの?
防音室を作るまでの防音工事となると、やはり高額なコストがかかります。したがって、誰もがコストをかけるだけの価値がある性能を実現してほしいと考えることでしょう。
これについては、基本的にどのような建物であっても防音工事自体は可能です。しかし、防音工事を予定している建物の状況によっては、お客様の要望を叶えるために、防音工事以外の部分にコストをかけてもらう必要が生じることがあります。
防音工事に関する情報を調べてみると、「部屋の中に部屋を作るようなイメージ」と解説されているのを目にする機会が多くなると思います。これは、既存の部屋について、壁を一度解体し壁の中に防音材を設置する以外にも、天井や床から振動が伝わらないようにするため、浮き床構造や二重天井と言った技法を利用するからです。この状態になると、まさに、部屋の中にもう一つの部屋を作って、浮かせているといった感じになるわけです。こういった施工方法を採用することから、本格的な防音室になると、部屋そのものの重量が非常に重くなってしまいます。そのため、リフォームで防音室を作る場合で、二階以上の居室に施工を希望すると、耐震性能に問題が生じてしまう可能性があるわけです。こういった場合、どうしても2階以上に防音室を設けたければ、防音工事の前に耐震補強工事が必要で、工事にかかる総額が高くなってしまいます。
つまり、防音室は、基本的にはお客様の要望に沿った性能をもたせることが可能ではあるのですが、それが費用対効果が合うかどうかをよく検討しなければいけません。例えば、2階以上に防音室を作りたい場合、音を出す時間帯を工夫することで、防音室に必要な性能が変わりますので、防音工事にかかるコストを抑えることが可能です。
まとめ
今回は、初めて防音工事を行う方が抱えがちな、防音工事に関する代表的な疑問を解説しました。この記事でご紹介した以外にも、さまざまな疑問が思い浮かぶと思いますが、その辺りはまた別の機会にご紹介していきたいと思います。
防音工事に関する疑問については、リフォームではなく「新築時に防音室を作っておいた方が良いですか?」と言った質問を受ける機会が増えています。これについては、上述したように、防音室の使い勝手は確実に良くなりますので、可能であれば新築時に作っておくのがオススメです。ただ、家を建てる時に、「どのような音の問題を抱えるのかいまいち分かっていない」というのであれば、音の問題が生じてから対策を施す方が良いと思います。
というのも、防音対策というものは、どのような音に悩んでいるのかによって行わなければならない対策がかなり違ってしまいます。例えば、「将来的に子供にピアノを習わせるかも」という状態であれば、防音室にかけるコストは無駄になってしまうでしょう。もちろん、テレワーク用の部屋として利用はできますが、テレワーク用の防音室としては明らかにオーバースペックですので、かけたコストは無駄になっている部分が多いです。