木造住宅は新築でも音漏れの不安が残る?最近建てられている木造は防音対策も考慮されている!
近年、大阪や東京などの都市部では、土地価格の問題などもあり、マンション暮らしの方が増えていると言われています。それでも、日本には長らく「新築戸建て住宅」への憧れのような物があり、将来的には一戸建て住宅で生活したいと考えている方はまだまだ多いはずです。そして、新型コロナウイルス問題を経験した現在では、他の家庭と一定の距離を確保できる戸建住宅への住み替えが加速していると言われています。コロナ禍では、人との接触を減らすことが重要とされていたのですが、不特定多数の人が出入りする集合住宅は、どうしても他人との接触が増えてしまいます。また、各家庭の生活する空間の距離が近いこともあり、騒音トラブルが頻発するなど、集合住宅での生活に嫌気がさした…という方も多いようです。
分譲マンションは、非常に頑丈な構造である鉄筋コンクリート造なのですが、それでも隣家との生活空間の近さから、足音や話し声、TVの音にペットの声など、近隣との騒音トラブルのリスクがそこかしこに潜んでいます。そして、こういった音の問題は、自分が悩まされるだけでなく、騒音の原因になる可能性もあることから、「集合住宅は窮屈な生活を強いられる…」と感じるようになった方も多いようです。
このような状況の中、家同士が独立していることから、音の問題を気にしなくても良いのではと一戸建て住宅へ住み替えたいという希望を持つ方が増えているのだと思います。しかし、戸建て住宅は、確かにマンションなどの集合住宅と比較すると、各家庭の距離は離れるものの、その建築構造が原因となり、防音性が低いのでは…という疑問が残ります。皆さんも、木造は鉄筋コンクリート造よりも、防音性が低い…という話を耳にしたことがあると思いますし、「集合住宅から戸建てに住み替えても音の問題は解消できないのではないか…」と不安に感じてしまう方も多いと思います。
そこで当コラムでは、日本国内の戸建ての主流である木造住宅について、「その防音性はどうなのか?」と言った点を解説します。
新築木造住宅の防音性について
在宅時間が長くなっている現在、集合住宅から戸建てへの住み替えを検討する人が増えているものの、そういった方の中には「新築でも木造なら防音性なんてたかが知れている…」と考えている方も少なくないようです。最初に言っておきますが、木造戸建ての中でも、近年建築されている住宅であれば、高気密・高断熱化が進んでいるため、高い防音性も期待できる状況になっています。
戸建ての防音性がここまで気にされているのは、大阪や東京などの都市部では、狭小地に3階建て住宅を建築するのが当たり前になっていて、家と家の距離が非常に近くなっているからです。集合住宅とは異なり、建物が独立しているものの、その距離の近さから、「隙間が多い木造なら、どうせ音に悩まされる…」と考えるわけですね。実際に、コロナ禍に、中古住宅を購入し住み替えた人の中には、お隣の生活音が聞こえてきて、前よりも音の問題が増えた気がする…という悩みを抱える方までいるようです。
そこでまず、現在の新築木造住宅での防音事情について簡単に解説します。
木造住宅の特徴について
建築物の構造には、木造を始めとして、鉄骨造や鉄筋コンクリート造など、さまざまなものがあります。ただ、日本国内の戸建て住宅事情を考えると、なんと約9割が木造建築となっています。木造住宅は、その他の建築構造と比較すると、防音性に弱点が残るのですが、総務省が行った「平成 30 年住宅・土地統計調査」では、現在でも新築業界で木造が圧倒的に多いとなっています。
それでは、さまざまな建築工法がある中でも、これほどまでに木造が選ばれるのはなぜなのでしょうか?一つの理由としては、日本でははるか昔から木造建築が採用されていたこともあり、日本人にとって非常に愛着のある建築工法だという点が大きいのだと思います。そしてさらに、以下のようなメリットが認められていることも木造が人気の理由でしょう。
- 通気性や湿度調整機能が優れているので、日本の気候に合う
- 建築資材が軽量なので、作業の手間が少なく、建築コストをおさえられる
- 自然由来の素材が使用されるので、温かみのある住空間を実現できる
木造住宅は、上記のようなメリットが認められており、古くから日本国内で人気です。ただ、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較すると、耐震性の面で劣る、家そのものの強度が低いなど、いくつかのデメリットも存在します。そして、防音性能の面では、その他の建築構造と比較すると、どうしても音漏れしやすくなってしまい、非常に大きなデメリットがあるという認識が広まっています。
実は近年建築される木造は防音の面で進化している!
日本国内で古くから木造住宅が選ばれていたのは、夏場の気候が高温多湿であるというのが大きいです。皆さんもご存知の通り、日本には梅雨というものが存在していて、この時期は雨の日が続くことからジメジメした高湿状態が続きます。このような気候で、隅々まで、隙間をきちんと塞ぐような建物の場合、室内の湿気をうまく逃がすことが出来なくなり、カビなどの繁殖を招いてしまいます。木造の利点の一つとして、通気性が良く、調湿効果が高いという特徴があるのですが、これにより高温多湿な時期でも室内に湿気がこもりにくくなることから、快適な住環境を維持しやすくなると考えられたわけです。ただし、通気性の良さは、音漏れ防止の面で考えると、非常に大きな弱点になってしまいます。こういったことから、旧来の木造住宅は、家が独立していても騒音トラブルの危険性がどうしても残ってしまっていたのです。
それでは、人々を取り巻く環境が大きく変わって、さまざまな音に囲まれながら生活するようになった現在、音の問題を抱えたくないのであれば集合住宅の方が良いのでしょうか?実は、上で少し触れたように、近年では、木造戸建て住宅に採用される建材や建築技術が飛躍的に進化しており、木造でも高い防音性・遮音性を実現できるようになっています。これは、近年の新築業界でキーワードのように使用されている『高気密・高断熱』が要因です。
高気密の住宅というのは、簡単に言うと、住宅にできる隙間を可能な限り生じないようにする工法で、家に隙間がなくなるので音漏れや侵入の心配が少なくなるのです。音は、空気を振動させて伝わっていくものですので、空気の出入り口となる隙間を塞ぐことで高い遮音性を確保できます。さらに、高断熱を実現するためには、壁の中にふんだんに断熱材を充填します。そして、この断熱材は、防音工事で吸音材として使用される素材ですので、建物の断熱性を高めることができれば、同時に防音性も高くなるというカラクリになっています。こういったことから、2023年現在、新たに新築される木造住宅については、従来から問題視されていた「木造の音漏れ」問題を解消できていると言えます。
なお、新築業界では、木造の床なのに、鉄筋コンクリート造並みの遮音性を持つ建材などが開発されています。したがって、昔から言われている「木造住宅は防音性が心配…」という問題は既に解決されていて、日常生活の中にある生活音レベルであれば、何の問題にもならない遮音性を持つ木造住宅を建てられると考えも大丈夫です。
新築木造住宅に取り入れられている防音対策について
新型コロナウイルス問題以降、集合住宅でも戸建て住宅でも、物件選びの際の重要なポイントとして、建物の遮音性をあげる方が多くなっていると言われています。コロナ問題では、テレワークなどが一般化し、人々の在宅時間が急激に長くなっています。そして、企業の中にはコロナ問題がある程度落ち着いた現在でも、テレワークなどの新しい働き方を継続するケースも少なくないようです。このような状況の中、新築業界では、建物の防音性の高さを売りにした物件や、防音室を設けた新築住宅などが販売されるようになっています。
したがって、集合住宅から戸建住宅への住み替えを検討した時には、物件の『防音性』に着目すれば、日常生活上の生活音で悩まされるようなことは少なくなっています。というのも、現在建てられている新築木造住宅は、今までの木造にはない、さまざまな防音対策が施されるようになっているからです。
新築での防音対策
住宅周りの建材は、日々進化しており「どの建材を採用するのか?」によって建物の機能性が大きく変わります。ここでは、防音性を高めるために採用される工夫をいくつかご紹介します。
- 窓の防音性について
窓は、壁と比較すると非常に薄い素材ですので、音漏れや侵入の原因となりがちです。窓の防音性を高めてあげると、住宅の防音性が劇的に向上すると言われています。そのため近年の新築では、防音性の高い窓ガラスを採用したり、二重窓を採用して窓部分の防音性を向上させている物件が存在します。 - 内壁について
上でも触れましたが、断熱材として使用されるグラスウールやロックウールは、防音工事で吸音材として活躍します。近年の新築住宅は、高断熱の家が目指されているのですが、高断熱が実現している場合、防音性も高いと考えても構いません。 - 床について
3階建ての戸建て住宅が増えている現在、床の防音性に注目しましょう。実は、戸建て住宅では、ご家族間で足音に関する音の問題が生じることが増えています。したがって、階下に足音が響かないよう、床部分にもしっかりとグラスウールを採用するなど、防音性を重視した物件が登場しています。 - 扉について
通常のドアは、閉めていても換気がなされるように、わざと隙間が生じる構造になっています。そのため、ご家族間で生活スタイルが異なる場合、音の問題を抱えやすいです。防音性に重点を置いた住宅の場合、ドア部分に簡易の防音ドアが採用されているケースがあります。特に、テレワーク用の簡易防音室を設ける場合、ドアに防音ドアが採用されているのかはチェックしましょう。 - 屋根について
意外な盲点となるのが屋根の防音性です。古くは、遮音性が高い瓦が採用されることが多かったのですが、現在ではスレートや金属屋根材など、軽量な屋根材が使用されています。しかし、こういった屋根材は、瓦と比較すると遮音性が低いため、雨音などが響いて不快に感じる不安があります。防音性が重視された住宅の場合、屋根裏断熱などで、屋根部分の防音性を高める対策が行われています。
現在建てられている木造住宅は、一昔前のものと比較すると、確実に防音性が高くなっています。しかし、どのような建材が採用されているのか、どういった工法なのかによって、得られる防音性が変わります。したがって、静かでリラックスできる住宅に住みたいと考えている方は、木造住宅の中でも、上記のような対策が施されている物件を選ぶのがオススメです。
何の対策もなく防げるのは生活音レベル
ここまでの解説で分かるように、近年新築されている木造住宅は、一昔前と比較すると、非常に高い防音性能を実現しています。そのため、大阪市内などで建築されている新築住宅のように、家と家の距離が数十cmしか離れていなくても、音によるトラブルが発生する可能性が低くなっているわけです。上述したような、防音建材が採用された木造住宅であれば、人の話し声やちょっとしたペットの鳴き声、家事の音などで近隣の方と騒音トラブルを抱える心配は少なくなっています。
しかし注意が必要なのは、いくら防音性が高くなっているとはいえ、楽器の演奏やホームシアター、カラオケレベルの大音量を発生させると、音漏れで近隣に迷惑をかけてしまうでしょう。現在の新築木造住宅の防音性が高くなっているとはいえ、防げるのはあくまでも生活騒音レベルの音で、楽器の演奏やカラオケを検討している場合、専門業者による防音室工事は必須だと考えてください。
実際に、大手ハウスメーカーなどは、静かな環境が求められるテレワーク用の部屋として、新築に防音室を作っていたりします。これは、裏を返せば、防音性が高くなっているとはいえ、生活音レベルでも多少の音漏れは生じるという意味です。さらに、本来、木造よりも高い防音性を持つとされる鉄筋コンクリート造のマンションでも、自宅で楽器の演奏を行う時には、ユニット型防音室を設置したり、防音工事業者に防音室を作ってもらったりしますよね。
もしあなたの希望が、日常生活で音の問題を抱えたくない…というのではなく、自宅で楽器の演奏をしたい、カラオケルームが欲しいといった要望なら、防音室工事が必須です!
まとめ
今回は、日本国内での建築構造として主流の木造住宅の防音性について解説しました。
日本で古くから木造が選ばれてきたのは、高温多湿な環境でも、その通気性の良さや調湿効果から、快適な住環境を作れると考えられたからです。しかし、空気の振動で伝わっていく音に関しては、その通気性の良さが騒音トラブルの原因になるという悩みが残っていました。実際に、多くの日本人は、「木造住宅は音漏れが不安…」というネガティブなイメージを持っているのではないでしょうか?
ただ、近年では住宅に使用される建材が飛躍的に進化したことや、建築技術が向上していることもあり、木造住宅の良さを残しながら防音性を高めることができるようになっています。そのため、近年新築された木造住宅については、生活音を原因とした騒音トラブルなどは、発生しにくくなっています。注意してほしいのは、木造住宅の防音性が高くなっているものの、防げるのは生活音レベルの音で、楽器防音レベルになると、完全に力不足です。
これから新築住宅を建てる方で、楽器の演奏を検討しているという場合、防音室が必須ですので、新築時に防音工事を行っておくのがオススメです。