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ピアノ演奏による騒音トラブルは、間違った認識が原因かも!ピアノに関する勘違いと防音対策

今回は、ピアノの演奏によって引き起こされる騒音トラブルについて、なぜ美しい音色のピアノが騒音トラブルの原因となってしまうのか、また自宅でピアノの演奏を考えている場合、どのような防音対策を行えば良いのかについて解説します。

ピアノは、日本人にとって最もなじみ深い楽器の一つと言えます。楽器にはさまざまな種類のものがありますが、ピアノはお子様の習い事としては最も人気が高いと言っても過言ではなく、この記事をご覧いただいている方の中にも子供が生まれたらピアノを習わせたいと考えている方も多いのではないでしょうか?
ただ、非常に美しい音色でどのような音楽でも欠かせない楽器の一つとなっているピアノですが、自宅で演奏する場合には騒音トラブルの原因になり得るということを忘れてはいけません。実際に、日本国内で最初に起きた騒音を原因とする重大事件は、集合住宅におけるピアノの音を原因としたものと言われており、この事件をきっかけとして、一般住宅での防音工事の必要性が議論され始めたとされるほどなのです。

それでは、音楽の中ではとても美しい音色に聞こえるピアノの音が「騒音トラブル」の原因となってしまうのはなぜなのでしょうか?実は、ピアノの音を原因としたトラブルは、演奏者側のピアノに対する認識の甘さが要因になっている場合が多いです。そこでこの記事では、自宅でピアノの演奏を検討している方に向け、トラブルを防ぐためにおさえておくべきピアノの基礎知識を解説します。

そもそもピアノが発生させる音量とは?

それではまず、ピアノの演奏音が他の騒音と比較して、どの程度の大きさなのかについて簡単に解説します。私たちの日常生活を振り返ってみると、誰でも完全に無音状態で過ごすことなどできません。例えば、人が歩けば足音が生じますし、掃除や洗濯などの家事を行う際も、それなりに大きな音が生じてしまいます。そして、集合住宅で生活する方が増加している、戸建てでも家と家の距離が近くなっているなど、人々の生活空間が近づいている昨今、日常生活上のちょっとした生活音ですら騒音トラブルの原因となってしまう場合があるのです。

それでは、ピアノの演奏時に生じる音量については、その他の騒音と比較した場合、どの程度の音量になるものなのでしょうか?自宅でのピアノの演奏を検討しているのであれば、ピアノが発生させる音の大きさはきちんとつかんでおく必要があります。結論から言ってしまいますが、ピアノを演奏した際に生じる音量は、それなりの腕前を持つ方が演奏した場合、90~100dB程度の音量になるとされています。これだけでは、比較対象の音が無いので、どれほど迷惑な音なのかが判断できないので、日常生活の中によくある音の音量を以下でご紹介します。

  • 落雷(120dB以上)
  • クラクションや叫び声(120dB前後)
  • トランペット(110dB以上)
  • 地下鉄(100dB以上)
  • パチンコの店内(80dB以上)
  • TVやステレオ(65dB前後)
  • 掃除機などの家電音(50~60dB前後)
  • トイレの水洗音(50dB前後)
  • 静かなの住宅地や図書館(40dB前後)
  • ささやき声・深夜の郊外(30dB前後)

これからも分かるように、ピアノの演奏音は、誰でもうるさいと感じるパチンコ店の店内や地下鉄レベルの音量となるのです。ちなみに、人がうるさいと感じるのは60dBを超えたあたりからとされますので、何の対策もなしにピアノの演奏を行った時、どれほど周囲に迷惑をかけているのかよくわかると思います。

もちろん、音の感じ方は人それぞれですし、音を聞いたときに何をしているのかによっても変わります。例えば、相手方が掃除機をかけている最中などであれば、ピアノの音も他の騒音にかき消されて気にならないかもしれませんが、寝室で寝ようとしている、リビングでくつろいでいるなんて時に、隣家から延々とピアノの音が聞こえてくれば、苦情の一つも言いたくなってしまうものです。
自宅でピアノの演奏を考えている方は、上記のように、相当レベルの騒音を発生させることになるということをきちんと認識し、後述するような対策を施さなければならないと考えましょう。

ピアノに関わる勘違いについて

ピアノの演奏音が原因となる騒音トラブルについては、演奏者側の認識の甘さが原因となっている場合が多いようです。例えば、「戸建て住宅だし、ピアノを弾ても大丈夫でしょ」「昼間に演奏するのは問題ないでしょ」などと言った甘い考えのもと、ピアノの演奏を行い、隣人との騒音トラブルに発展しているようです。

上でもご紹介していますが、ピアノが発生させる音量は、地下鉄やパチンコ店の店内の音量に匹敵するほど大きな音となります。そのため、先述のような考えは甘いと言わざるを得ないのです。ここでは、実際にピアノの演奏音で苦情を言われたことがあるという方に考えられる、ピアノに関する勘違いをいくつかご紹介します。

ピアノは音色(空気音)の対策をすれば良い

ピアノは、非常に美しい音色が特徴の楽器です。しかし、テレワーク中や就寝中など、音楽を聴きたいと考えている時以外に聞こえてくると、騒音以外の何物でもありません。

そして、ピアノが原因となる騒音トラブルでは、「音色の対策をすれば近所に迷惑をかけない!」と言った勘違いが原因となる場合が多いです。簡単に言うと、ピアノは、いわゆる空気伝搬音の対策さえすればOKという考えのもと、防音対策を行っていたというパターンです。これを聞いても「何が間違いなのか分からない…」という方も多いかもしれませんね。

実は、ピアノという楽器は、耳に聞こえる音色だけでなく、物体を振動させて伝わる固体伝搬音の対策が必要になるのです。ピアノを演奏する際には、鍵盤を叩いてそれが内部の弦を叩き音が出るという仕組みになっていますし、頻繁にペダル操作なども行いますよね。そしてこの際には、かなりの振動が発生し、ピアノの脚からその振動が床に伝わり、他の部屋に拡散していくわけです。実際に、マンションなどの集合住宅では、隣家などからピアノの演奏音に苦情が出るのではなく、階下の住人からクレームが出るケースが多いとされています。ピアノは、空気音だけでなく、固体音も出るため、両方の対策が必要だと覚えておきましょう。

戸建てなら騒音トラブルの心配はない

マンションから戸建て住宅に引っ越しする場合、「騒音トラブルの心配がなくなるからよかった」などと、無根拠な安心感を持つ方がいます。確かに、一昔前までの戸建て事情を考えると、庭付き一戸建て住宅が当たり前で、お隣の家とはそれなりの距離が離れているといった理由で、集合住宅よりも騒音トラブルの可能性はかなり低くなっていたと思います。しかし、現在の新築事情を鑑みると、この考えはかなり甘いと言わざるを得ないでしょう。

というのも、現在では、狭小地に3階建て住宅を建てるのが一般的となっていて、お隣の家との距離が数十cmしか離れていないなんてケースも珍しくありません。この場合に、昔からの常識をそのまま引き継ぎ、無遠慮に楽器の演奏をしたときには、お隣の家に音が筒抜けになり、騒音トラブルに発展する可能性があるのです。

日本国内の戸建て住宅は、そのほとんどが木造建築となっています。実は、木造住宅の壁の防音性は、約30db程度しかないと言われています。最近では、高気密・高断熱住宅が登場していて、このタイプであればもう少し高い防音性能を持っていますが、それでも本格的な防音室のような性能を発揮することはありません。それでは、このような住宅で100dB以上の音量が出るピアノの演奏を行った場合、どうなるのでしょうか?壁からは70dB以上の音が漏れて行ってしまい、隣家との距離が近ければ十分に騒音と感じられる大きさの音が侵入していってしまいます。さらに、一般住宅に使用されている窓については、壁よりも防音性が低く15dB程度の防音効果しかありません。つまり、窓からはもっと大きな音量の音が漏れて行っているわけですので、戸建て住宅の立地によっては隣人に迷惑をかける可能性は十分に高いはずです。
音は、距離によって減退していきますが、都市部の戸建て住宅のように家と家の距離が近くなれば、十分に減退されることなく伝わってしまうため、騒音と捉えられる可能性が高いです。つまり、「戸建てなら騒音の心配はない!」という考えは状況によると考えましょう

昼間の演奏なら問題ない

お子様にピアノを習わせている方の中には、この考えを持っている方が非常に多いように思えます。これは、まだ子供だから熟練者ほど大きな音を出せない、昼間は近所の方も外出しているだろうなどと言った考えを持っているのだと思います。

まず、「子供だから熟練者ほど大きな音が出ない」については正しいです。しかし、練習していれば、どんどん演奏音は大きくなっていきますので、勝手な判断で「近所に迷惑はかけない」と考えない方が良いです。そして、「日中はご近所さんも仕事でいないでしょ!」という勝手な考えは、大きな間違いと言わざるを得ないでしょう。もちろん、ご近所さんに事前に確認をとり「〇時から〇時まではいない」という確約がとれているのであれば問題ありませんが、そうでないのなら騒音トラブルの可能性は高いです。

例えば、コロナ禍以降は、テレワークなどの新たな働き方が一般化しており、昼間も自宅で仕事をするようになった人は増えています。この他にも、夜勤で働いている方が近所に住んでいる可能性もあるでしょう。このような条件の場合、勝手な判断で何の防音対策もせずにピアノの演奏を行うと、ご近所迷惑になり騒音トラブルに発展する可能性が高いです。

ピアノによる騒音トラブルを防ぐには?

それでは最後に、自宅でピアノの演奏をしたいと考えている方に向け、ピアノの演奏音が原因となる騒音トラブルを防止するための対策についてもご紹介します。上述したように、ピアノの演奏音は皆さんが考えている以上の大きな音量となりますし、振動音も発生することから、何の対策もしなければ、ほぼ確実に騒音苦情が発生すると考えて良いです。これは、集合住宅に限らず、戸建て住宅に住んでいる方も同じだと言えるでしょう。

それでは、ピノの演奏音が原因となる騒音トラブルを防ぐには、どのような対策が考えられるのでしょうか?ここでは、代表的な対策をご紹介します。

消音器や電子ピアノで練習する

マンションなどの集合住宅に住んでいる方におすすめなのが、ピアノに消音器を取り付ける、サイレントピアノや電子ピアノなど、演奏音を外に出さないようにできるピアノを購入するという方法です。

この対策であれば、ピアノを演奏したとしても、騒音トラブルの原因となる大きな音は一切生じません。したがって、集合住宅のように、各家庭の生活空間が非常に近いという状況でも、ピアノの音色に対して苦情が出る心配は一切ないのです。ただ、注意しなければならないのは、鍵盤を叩く、ペダルの操作をする際の振動音は生じてしまいますので、振動への対策は別途必要です。例えば、ピアノの下に防振マットなどを敷くことで階下に伝わる振動を軽減する、1階の部屋を選ぶなどの対策を考えれば、振動音に関するトラブルも回避できるでしょう。

この対策のデメリットとしては、ピアノの生音を聞きながら練習することが出来ない、アコースティックピアノとは弾き心地が異なるなどと言った点です。ピアノの上達を考えた時には、自分が出した演奏音を聞きながら練習することが大切とされていますので、電子音に変換されるタイプのピアノはあまり好ましくありません。また、自宅にピアノの先生が訪問して教えてもらうなど、レッスン上で本物のピアノに触れる機会がないという方の場合、ピアノの上達を考えると、アコースティックピアノの設置が望ましいと思います。

関連:電子ピアノはアップライトピアノに近い?自宅でピアノの練習をしたい人が知っておきたい両者の違い

戸建てでも隣家とそれなりに距離がある場合、部分的な防音で対処

消音ユニットや電子ピアノは利用したくないという方の場合で、隣家とそれなりの距離が離れている状況なら、二重窓工事など部分的な防音対策で対処が可能なケースもあります。

上述しているように、住宅の中でも、窓は非常に薄い素材であることから、防音上の弱点になってしまう場合が多いです。したがって、近隣への音漏れ対策を考えた時には、窓部分の防音性を高めてあげる防音工事を行うと良いです。例えば、既存の窓ガラスを防音ガラスに交換する、既存窓の内側にもう一枚窓を設置して二重窓にするといった対策が有効です。隣家とはそれなりに離れていて、音が距離によってそれなりに減退すると考えられる状況なら、二重窓など部分的な防音対策を施し、日中の演奏だけにするといった対処で騒音トラブルの可能性を低くすることができます。ただ、その場合でも、ご近所の方には、日中にピアノの練習をしたい旨を事前に相談しておきましょう。「防音対策もするから」と事前に伝えておけば、相手方は悪い気はしませんし、うるさいと感じた時もトラブルになる前に相談してくれるようになるはずです。

なお、日中、自宅でピアノの練習をする際、他の家族に音で迷惑をかけたくないと考えるなら、室内ドアを防音ドアに交換するなどの対処も一緒に行っておくのがおすすめです。

防音室を作る

最後の手段は、専門業者に依頼して防音室を作るという方法です。最もコストがかかる方法ですが、騒音トラブルの心配を一切せず、気兼ねなくピアノの演奏ができるようになりますので、最もオススメの方法と言えます。

集合住宅や隣家との距離が近いといった環境の場合、アコースティックピアノの演奏は部分的な防音対策では不十分です。ピアノは、空気音だけでなく振動音も生じる楽器ですので、皆さんが考えている以上に高度な防音対策が求められます。中途半端な対策を施した場合、防音対策にかけるコストも無駄になりますし、近隣の方との関係も壊れてしまいますので、思い切って本格的な防音室を作るのがおすすめです。

なお、防音室については、ヤマハさんなど楽器メーカーが販売しているユニット型防音室を購入し部屋の中に設置するという方法と、阪神防音のような専門業者に依頼して、既存の部屋を防音室に作り替える方法の2パターンがあります。前者は、リフォームよりも短工期、低コストというメリットがある反面、防音性能や音響環境など、お客様に合わせて性能を調整することができません。後者の場合、お客様が求める防音室を一から設計してもらうことが出来ますので、楽器の練習環境としては最適な防音室を構築することができるでしょう。

> 阪神防音のピアノ室防音工事について

まとめ

今回は、ピアノの音が原因となる騒音トラブルについて、ピアノの演奏音に関するよくある勘違いをご紹介しました。

ピアノの演奏音については、空気音である音色だけが問題になる可能性があると考える人が多いのですが、実はピアノは本体そのものが振動して音を発生させる楽器なので、階下などに伝わる固体伝搬音への対策も必要不可欠です。さらによくある勘違いでは、戸建て住宅なら昼間の演奏は問題にならないなどと言った考えを持っている場合があるのですが、これも昨今の戸建て事情を考えると、大きな間違いと言わざるを得ません。
現在では、少ないスペースを使って多くの住宅を建てるようになっているため、戸建て住宅の生活空間もマンション並みに近くなっています。さらに、戸建ては木造住宅であることから、鉄筋コンクリート造のマンションよりも家そのものが持つ防音性が低く、ピアノの音などはより問題になる可能性が高くなっているのです。

記事内では、ピアノに対するよくある勘違いについてご紹介していますので、自宅でのピアノ演奏を検討している方がいれば、是非意識してみましょう。